「INCLUSIVE DESIGN Talk 02:Universal MaaSが移動の障害を無くす」レポート公開!

INCLUSIVE DESIGN Talk 02:Universal MaaSが移動の障害を無くす
日時:2021年3月8 20:00〜21:00
ゲスト:全日本空輸株式会社 大澤信陽
聞き手:PLAYWORKS タキザワケイタ

本レポートはWEB公開された「UDトーク」のログをもとに作成されています。

 


 

好奇心のままに行動する


タキザワケイタ(以下、タキザワ):インクルーシブデザイナーの PLAYWORKS タキザワです。Clubhouseにてインクルーシブデザインを語る「INCLUSIVE DESIGN Talk」。今回も「UDトーク」をWeb公開し、リアルタイムで字幕配信していきます。そして、第2回のゲストは全日本空輸株式会社 大澤信陽さんです!


大澤信陽氏(以下、大澤):よろしくお願いします、ANAの大澤です。「Universal MaaS 〜誰もが移動をあきらめない世界へ〜」というプロジェクトを、公私問わず24時間365日やっております。


タキザワ:ANAにはいつ入られたのでしたっけ?


大澤:2001年入社で「全日空システム企画」というANAグループのシステム開発や保守運用を担っている会社で、今は「ANAシステムズ」という社名に変わっています。


タキザワ:そこからANAへ出向されたのですか?


大澤:はい、完全に出向扱いとなってからは1年半です。徐々に今の仕事に移っているのですが、3年前は3つぐらい部署を兼務していました。もともとのANAシステムズの仕事とANAにおけるイノベーション推進に関わる仕事、そしてANAバーチャルハリウッドという社員の自発的提案活動の枠組みを活用させていただきながら後にANA企画室で新規事業として推進しているUniversal MaaSの3つを兼務しておりました。


タキザワ: 一時期、大企業でのイノベーションブームありましたよね。その頃ですか?


大澤:そうですね。その当時にタキザワさんと知り合ったのですよね。そのANA企画室の中に、Mobility as a Serviceを略したMaaS推進部が2019年7月に新設され、以降、Universal MaaSに全てを注がせていただいております。


タキザワ:「Universal MaaS」の事業をやろうと思ったきっかけは、何かあったのですか?


大澤:いろいろありました。十数年、Webの仕事をやっていたので、そろそろ他のこともやりたいなと思って、いろんなインプットをしていました。毎年新しい趣味を見つけるのが趣味なのですけど、その中で刺さったのが、パーソナルモビリティを自動運転化するという技術でして、当時、堀江貴文(ホリエモン)さんのオンラインサロンに入っていて、書籍も読んだりして刺激を受けている中で、やっぱり自分のやりたいことを突き詰めたいなって。


タキザワ:ホリエモンさんのオンラインサロンに入ってなかったら、「Universal MaaS」はなかったかもしれないですね(笑)


大澤:そうですね(笑)


タキザワ:先ほどお話ありましたけど、タキザワとの出会いは2019年夏にPLAYERSが羽田空港で「&HAND」の実証実験と、渋谷ヒカリエで「超福祉展」での展示をやっていた時、同じ日に羽田から渋谷に移動していたという出来ごとがありましたね。


大澤:そうそう、お互いに同じタイミングでね。


タキザワ:大澤さんはめちゃめちゃフットワークが軽くて、ネットワークが広い印象があって、障害者支援や移動系サービスの人とはほぼ繋がっていますよね?


大澤:いやぁ、まだまだですね。タキザワさんほどじゃないですもん。もっと色んな方と繋がりたいと思っていて、とにかく学びたいのですよね。


タキザワ:その好奇心が旺盛なのは、昔からですか?


大澤:昔からですね(笑)親の関係で転勤族でして、過去に11回ぐらい引越をしていて、転校が7回ぐらいかな。その辺が関係していると思います。


タキザワ:転校7回はすごいですね。では、環境が変わることには慣れているわけですね。


大澤:むしろじっとできないのでしょうね。同じところにいることができず(笑)


タキザワ:それは「Universal MaaS」に繋がっていますね。ちなみにタキザワのことは、どういうふうに見えていましたか?


大澤:超有名人って感じ(笑)まさかお話しができるとは思っていなかった。いろいろなワークショップや社会活動をされていて、ぜひどっかでお話ししたいなと思っていました。でもタキザワさんとはひょんなところでよくお会いしますよね。


タキザワ:こないだも秋葉原駅ですれ違って、その後に合流していろいろお話ししましたよね。


大澤:お互い行動パターンが似ていますね…(笑)




移動の本当の価値とは?


タキザワ:「Universal MaaS」のサービスについて、説明してもらってもよいでしょうか?


大澤:まずは「MaaS」について説明するとMobility as a Serviceの略で、一般的にいろんな種類の交通サービスを、需要に応じて利用できるひとつのサービスに統合することと言われています。もうちょっとかみ砕くと、僕らが移動する時にドアtoドアで考えると、いろんな交通事業者やサービス事業者のサービスを受けていますよね。その事業者のルールに則って支払したり、乗車したりしていますけど、よく考えると移動ってまとまったひとつの行動なので、ひとつのサービスとして提供された方が効率的でシンプルになるのですよ。


タキザワ:なんかMaaSって、一時期に一気に聞くようになったじゃないですか。なにかきっかけはあったのですか?


大澤:いろいろありましたが、一番のきっかけはなんだろうな。最初はフィンランドの学会で発表された論文なのですけど。


タキザワ: いま聞くと、いろんなモビリティが1つのサービスとして連携した方が良いって当たり前の考えですが、なんでそれまでそうしようと思わなかったのですかね?


大澤:なんででしょうかね?ただ昔から同じような考えはあって、航空サービスでいうと空港から先のバス、特に地方空港は航空便と連携していたりするので、ある意味それもMaaSと言えるかもしれないですね。でも色々と体系だってまとめられたり、様々な技術が発達したりしたことによって、より連携しやすい環境が整ってきたのだと思います。


タキザワ: たしかにMaaSって言われると、それっぽく聞こえますよね。MとSだけ大文字なのがシンボリックだし。


大澤:MaaSの概念については日本に輸入された後に、ICTやスマホアプリを利用してサービス提供することとか、いろんな定義が溢れていますね。そういう意味では、まだまだ流動的なのかもしれないです。MaaSはいまお話したような考え方でして、それをユニバーサルデザインで追求しているのが「Universal MaaS」です。ユニバーサルデザインって、より多くの人に使いやすくするっていう考え方なのですけど、それを実現したいのです。


タキザワ: ユニバーサルデザインのアプローチで、MaaSをサービスデザインしていくという ことですね。


大澤:これまでのインフラやサービスは、いわゆる「健常者」目線で作られていることが多くて、そこから溢れてしまった人たち、一般的には障害者や高齢者と呼ぶのですかね?それらの人たちが不便を感じているのです。僕らは障害者や高齢者ではなくて「移動躊躇層」、移動をためらっている方々と呼んでいて、その方々の視点でサービスをつくれば、誰にとっても便利になるはずだと考えています。そういう世界をもう一度作り直したいなと。なので「Universal MaaS」って名付けました。それだけだと分かりづらいので、サブタイトルとして「誰もが移動をあきらめない世界へ」をつけています。


タキザワ:躊躇層っていうことは、障害のある車椅子の方とか視覚障害者だけではなく、ということですよね?


大澤:はい。例えばペットを飼っている人って旅行をためらったりしますよね。コロナ禍においては、全ての人が移動をためらってしまっている。よって全ての人が移動を躊躇する当事者だと思っています。今、僕はテレワーク主体なのですが、移動しなくても数多くの会議をこなせる便利な面があるなと思っている反面、通勤時間帯に行っていた情報収集やSNSでの受発信が出来なくなっちゃって…


タキザワ:僕もこれまで移動時間って無駄だと思っていたのですけど、頭を整理したり、一旦リセットしたり、その無駄な時間がパフォーマンスに大きく影響していたことを実感しています。


大澤:そうですね。


タキザワ:その無駄な時間をサービスに組み込む。あえて遠回りするとか、所要時間を長めに設定し、それに合わせたルートを提案してくれる機能があっても面白いですね。


大澤:いかに移動の価値を付けるかっていうことは結構考えていて。人生のうちに移動した距離が長い人ほど、幸せになるとか、賢くなるっていう話もありますよね。移動している間、人は無意識のうちに何らかのインプットをしているので、あえて移動したくなる施策をどんどん打っていきたいのですよね。コロナ禍においてはなかなか難しいですが。


タキザワ: 移動をあきらめない世界が実現した先に、どう移動を楽しむか? もっともっと移動したくなる価値が出てきたら楽しそうですね。


大澤:そうですね。便利な移動って今までいろんな方々が追求してきていますけど、あえて遠回りしたり、あえて困難な移動を体験したりすることで得られるものもいっぱいあると思っています。その価値に気づいてきたので、なにかやりたいなと思っています。


タキザワ:それはいいですね!


大澤:例えば、あえて車椅子に乗って移動してみると、すごい気づきがあるのですよね。通常の研修のように車椅子での移動の大変さを味わいましょう!ではなく、車椅子で新たなイノベーションの種を探しに行きましょう!という感じ。


タキザワ: 乗り物として車椅子を楽しめそうですね。


大澤:はい!でも、真夏にやると本当にキツいですよ。車椅子ユーザーの方は共感いただけるかと思いますが、アスファルトの熱を浴びて物凄く暑いですよね。駅の券売機の高さが高すぎて使いづらいとか、そういう視点もありますが、一方で、普段何気なく通過している街の壁が、実は鏡みたいになっていたのだとか発見があったり、車椅子を漕いでいる自分の姿を見て、新鮮な気持ちになったりとか、いつもと違う視点、価値観で移動を楽しめます。


タキザワ: いいですね。


大澤:車椅子ひとつとっても、普段、接していなかったような技術を使っているので、福祉機器展とか行くのが大好きです。車椅子の収納機能が付いたクルマなどの技術を学んだり、動きをまじまじと見たり、それを福祉車両としてじゃなく、より多くの人に提供できるような価値に変換できるのではないかと。


タキザワ: そこはすごく大事ですよね。福祉車両・福祉機器でとどまらずに、いかに一般の価値へと展開できるか。大澤:そうです。駅のエレベーターがまさにそうじゃないですか。車椅子ユーザーやご高齢の方のために作った設備が、大きい荷物を持っている人やベビーカーを押している親御さんだったり、ちょっとお疲れの方が使っていたりとか。世の中を見渡すとそういう製品っていっぱいあります。それを移動サービスの世界でもやりたくて。


タキザワ:電動車椅子の自動運転の実証実験に参加させてもらったことがあり、先頭の人だけが手動で後ろが列になって自動で追尾していくのですけど、引き連れている感じが乗り物として面白かったですね。


大澤:遊園地とかに置いてあっても面白い。やっぱりエンタメ要素を入れながら始めると、ワクワクしながら、より楽しんで推進できるので良いですね。




Universal MaaS のサービスデザイン


タキザワ:「Universal MaaS」はANAさんの事業としてやっているのでしたっけ?


大澤:当初はANAの事業としてやっていました。2019年6月からは、産学官連携としてANAだけでなく、京急電鉄さんや横須賀市さん、横浜国立大学さんを含めた座組みを中心に推進していて、最近ですと24の企業/団体に実証実験パートナーとして参画いただいています。僕らは排他的にはやってないですし、日本中、世界中にコンセプトを広げていきたいので、皆で推進していこうとしています。悩ましいのがビジネス的な観点ですね。例えばアプリやサーバー運営の費用をコロナ禍でも確保して回していかなければならないという部分です。


タキザワ:そうですよね。最初はみんなでやりましょう!っていう形で組んだりするのですけど、ビジネスにしようとするタイミングでお金や責任をどうする?という課題はつきまといますよね。


大澤:そうです。でもそういった問題って、僕みたいな暑苦しい人間がいれば何とかなるのかなと。だから僕自身も諦めずにこの事業を推進していく。だからこそワクワクしながら楽しんでいきたい。


タキザワ:今までで一番つらかったタイミングってどこですか?


大澤:あんまりないです。外から見たら辛そうだな、大丈夫か?って言われることもあるのですけど・・・・・・お陰様で打たれ強くなりましたね(笑)


タキザワ:素晴らしいですね。外から見ていると大変なことをやられていると感じていました。企業間連携って実際にやろうとすると、めっちゃ大変じゃないですか。調整ごとの連続だったりするので、それを真正面からやっているのがすごいです。


大澤:やらされ感でやっているとできないでしょうね。自分でやりたくてやっているので (笑)


タキザワ: そうですね。うまく巻き込んでいくコツは何かあるのですか?


大澤:本当に単純です。やりたいことを突き詰めれば乗り越えられるので、乗り越えられないものをやっているとしたら、それは本当にやりたいものじゃないのですよ。自分の趣味でやっていることって、ちょっとの壁なんて乗り越えるじゃないですか。それと同じで、良い意味で仕事と仕事の境目なくやっています。


タキザワ:ほんと最後は本人のパッションですよね。パッションにプラスして必要なものは何かありますか?


大澤:忍耐力、鈍感力ですかね。でも実際は僕もいろいろ気にしちゃう人間で、空気を読めないように見えて実は読んでいます。みんなに笑われるけど…


タキザワ: 大澤さんはめちゃめちゃ考えてそうなイメージがあります。自分から情報を取りに行って、その上で次のアクションを判断し、違うと思ったらすぐ変えちゃう。


大澤:よく、いろいろと変えるなって言われます。ブレブレじゃないかって。でも自分の中では全然ブレていないです。輪切りで状況を見ている人たちは、ブレてると感じるのかもしれないですけど。


タキザワ:分かります。ビジョンの実現に向けたチャレンジや実践から、常に成長しながらプロジェクトを進めていると、自分と周囲とにギャップが生じてきてしまいますよね。


大澤:そうそう。僕は人に説明するのがあんまり得意じゃないので、ギャップや誤解などを起因とした小さな失敗は数え切れないほどあるのですが、メンターのように色々と助言してくださる方々が周囲に沢山いてくださり、ありがたいことにいつも皆さんに助けていただいています。


タキザワ:でも、ビジョンに向かって手段を選ばずに突き進んでいく人がいないと、こういうプロジェクトって前に進まないですよね。僕も一人で勝手に突き進んでいくタイプですが、それも周りに仲間がいてくれるお陰です。


大澤:本当、仲間がいないとできないですよ。


タキザワ: 企業と連携する時も、仲間探しをしている感じですか?


大澤:意識的に仲間を探しているわけではないのですが・・・・・・あっ、来てくださる方には必ず会うようにしています。そこでパッションや熱量が合う人と続いている感じです。


タキザワ:この人かどうかって直感で分かりますよね。この人は違うかなと感じた人は、やっぱりうまくいかないパターンが多い気がします。


大澤:そうそう。嗅覚ですね。


タキザワ:「Universal MaaS」はチームがあるのですか?


大澤:MaaS推進部の中で「Universal MaaS」担当のチームがあります。実際は2・3名でやっています。専属は僕ともう1人ぐらいですね。


タキザワ:もう1人のパートナーはスキル的にはどういった方ですか?


大澤:コールセンターから出向してきている若い方で、業務知識は豊富でいつも助けてもらっていますが、新規事業という経験は僕と同じくゼロの状態から始めています。もともと新規事業というものは、年齢とか関係なく対等にフラットな関係性を保って推進する方がうまくいくと思っているので、むしろ若い人からいろいろと教えてもらいたいと思っていて、尊敬しています。そういうのを語るとオッサンになったなぁと思うのですけど、自分の価値観が古くなっていないか壁打ちしながら確かめながらコミュニケーションを図っています。


タキザワ:「Universal MaaS」のようなサービスをデザインする時に、ターゲット設定って難しいなと思っていて、どうしても相容入れない部分が出てくるじゃないですか。分かりやすい例としては、点字ブロックは視覚障害者の移動を支援するインフラとして大事ですけど、車椅子の方にはちょっと不便みたいなことだとか… この辺はどういうふうに考えてやられていますか?


大澤:車椅子ユーザーや視覚障害の方の集まりでもよく言うのですけど、その両方の特性を持っている方や、双方が混ざり合ってコミュニケーションする機会ってあまりないので、そこをやっていく必要があると思います。コミュニケーションといっても難しい話じゃなくて、飲み会をすればいいんですよ。いろんな特徴を持っている方と混ざり合って飲み会をやればいい。一発で解決しますよ。コロナ禍なので今は難しいですが。


タキザワ:そうそう、コミュニケーションによって根本的に解決できる社会問題は多いですよね。でもサービスに落としていく時に、ターゲットを絞らざるをえない状況もあるじゃないですか? いまビーコンを内蔵した点字ブロックで視覚障害者を道案内するサービスを作っていて、つくり手の思いとしては全盲の方も使えるサービスにしたいです。でも、サービス設計的には弱視の方にフォーカスした方が難易度が低いですね。いきなり難しい所へのチャレンジで失敗して撤退するよりも、着実な所でノウハウを溜めながら進めていく方が成功確率が高まる。そうなると、これまでに協力してくれた全盲の方の期待に応えられなくなってしまう…


大澤:ビジネスだと母数が多いところを狙っていくのが定石だと言うじゃないですか。僕はビジネスを前提に考えたくないのですが、企業に所属している限りは考えなければいけないのですよね。そのジレンマがありますが、僕はまずは身近にいる人のために作りたい。「Universal MaaS」で一緒に推進している加藤さん(旧姓 堀江さん)がその一人でして、加藤さんはプロモーションビデオにも出演してくださり、そこで詳しく語ってくださっていますが、数年前に右半身麻痺になってしまった方です。そんな堀江さんのためにまずは移動サービスのあるべき姿を考え、それを実現させようと取り組んでいます。そして、徐々に対象を広げ始めているのが現状です。なので、思考回路はとてもシンプルです。


タキザワ:まずは目の前の人のためにですね。大澤さんの中で現在の「Universal MaaS」の完成度は何%ぐらいですか?


大澤:僕は色んな所で一生の仕事にするって言っていますけど、もしかしたら僕の一生じゃ足りないかもしれない。あっ、ゴール設定次第ですね(笑)そういう意味ですと、車椅子ユーザーのためという視点だと、結構いいところまで来ていると思っています。でも、あるスロープを登れる車椅子ユーザーもいれば、登れない方もいる、みたいなところもあるので、数値にできないのはそういった理由からなのですけど。


タキザワ:そうですよね。車椅子は電動も手動もいろいろありますしね。


大澤:そうそう。ストレッチャーやバギーユーザーなどもいらっしゃるし。そして、視覚障害や聴覚障害という切り口では、また違う技術や情報が必要になるので、今はそこを漁っている感じですね。


タキザワ:今はアプリを提供しているのですよね?


大澤:アプリは一つのインターフェースとしてあるだけで、どちらかといえば情報が大事です。先ほどドアtoドアって言いましたけど、現在は、全国から羽田空港に着いた前提で、そこから京急線に乗り換えて横須賀市内まで行くルートで実証実験を実施しています。アプリは2つあり、1つは車椅子のカーナビみたいな機能を持つお客さま向けのもの。もう1つはそのお客さま向けアプリを登録している人の特性情報、例えばこんな介助をして欲しいとか、こういった介助が必要ですという情報や、お客さまの現在位置情報を受信できるようになっている事業者用のアプリです。そのアプリは空港の係員や駅係員、施設管理の方が持っていて、先手先手でサービス提供の準備をすることができます。2つのアプリを使って実証実験を行っている最中で、移動をためらっていた移動躊躇層に移動してもらい、新しい移動需要を喚起しようとしています。ただ、事業者側が現状の業務オペレーションのままで、移動躊躇層がたくさん移動するようになると、事業者側の業務オペレーションが破綻してしまいます。


タキザワ:なるほど…


大澤:今まで移動されていなかった方々が移動するとしたら、事業者側の業務オペレーションもアップデートしなければならない。お客様だけではなくて事業者側、つまり従業員も助けられる仕組みが必要で、そのような理由から2つのアプリを用意しています。


タキザワ: お客さまは複数のアプリを立ち上げなくても、統合された移動に関する情報を得られる。事業者側は移動躊躇層の人がどこにいてどこに向かっているか、どういう特性を持っていてどういう介助が必要なのかが分かり、事前に対応の準備ができる。ということを連携した2つのアプリで実現しているということですね。


大澤:はい。この2年間で分かったのは車椅子ユーザーも十人十色で、こういう経路がいいだろうとサービス提供者側が示しても、それじゃない経路が好きな方もいるので、いろんな選択肢から車椅子ユーザーが自分に合った経路を選択できるような仕組みづくりを進めています。


タキザワ:それは観光ルートもあるのですか?


大澤:ゆくゆくは観光に繋げたいですけど、今は最終目的地の情報を収集することが必要だと思っています。


タキザワ: 選択肢というのはバスかタクシー、電車を選べるみたいなことですか?


大澤:交通手段の選択は大前提で、もっと細かいです。例えば、どの駅で乗り換えるかとか。あともう一つ、大事なことがあります。お客さま側だけでなく、事業者側も事業者毎に業務オペレーションが異なっているので、それぞれにチューニングして提供しなければいけないっていうことです。一方で移動躊躇層はまだ移動していない方々なので、そこを増やさないと現実味がないですよね。で、移動躊躇層の移動をいかに喚起するかに注力していたらコロナが蔓延しだして、皆が移動躊躇層になってしまった…この状態を何とかチャンスとして捉えて進めています。




妄想から発想する


タキザワ:コロナによって移動の概念も変わってきていますよね。でも、いま聞いた感じですとなかなかチャレンジングなサービスだなという印象を受けました。2段階ですよね? まずは移動を躊躇していた人たちをいかに移動したい気持ちにさせられるかということ、次に移動中に必要なサービスをちゃんと提供できるかということ。特にサービス提供する事業者側には新たな負荷なので、そこをどうオペレーションしていくか?


大澤:移動する側もそうですけど、サービスを提供する側も楽しむことが大切ですよね。また飲み会の話になっちゃいますけど、お客様vsサービス提供者みたいな対峙する関係ではなくて、混ざり合えばいいのにって思っています。


タキザワ:サービス提供する側とそれを受ける側、っていう関係になるからダメですよね。一緒に移動を楽しむ、会話や風景を楽しむという関係性を築けない限りは、いろんな壁を突破できないですよね。


大澤:同じ人間同士だからできるはずなのに、あえて分かれてしまっているじゃない?


タキザワ:サービス提供者側とお客様の「飲み会マッチング機能」があればいいんじゃないですか? (笑)


大澤:(笑) フランクにフラットな関係になれば、いろんな課題が解決できるのにって思うことは結構ありますね。


タキザワ: 僕も鉄道会社さんに、駅員とその駅を利用する障害者で駅や街を一緒に移動する体験をした後に、飲み会をやるっていうワークショップを提案したことがあります。むしろ飲み会が本番で、美味しくお酒を飲むためのアイスブレイクとしてワークショップがあるイメージです。そこで互いに仲良くなって、次に駅で会ったら「よっ!」て挨拶し合える関係になるのが大切ですよね。このワークショップを全国の駅でやりたいですよね。


大澤:そうそう、通勤通学で使う駅では駅員さんとは仲が良いという方は沢山いらっしゃるので、そういう感覚ですね。ワークショップも最初に飲み会からやればいいんじゃないですか?(笑)


タキザワ:そうですね。でも視覚障害者の方とか、飲ませた後に一人で帰らせるのは少し心配にならないですか?


大澤:あー、たしかに。僕もなるべく最後まで送るようにしています。


タキザワ: やっぱりそうですよね。「飲み会マッチング機能」はぜひご検討ください。特性の中に趣味の欄をつくっても良いですね。あと今だと、移動しながらClubhouseでつないで喋るってのも面白いですね。


大澤:それはすごいな、皆が喋りながら移動していく。


タキザワ:例えば羽田空港に向かっている時に、羽田空港で待っている人とClubhouseで喋りながら向かうとか。「今○○○が見えます」「ここでお待ちしています」みたいな。


大澤:なんか新しい発見ができそうですね! でもそのためにも、歩きスマホの問題をなんとかしなきゃいけない。こんなこと言うと怒られちゃいますが、点字ブロックを線路みたいにしてそこを歩きスマホ用にしちゃうとか。単線ではなく複線にして衝突防止策を考えた上で。そして、車椅子ユーザーはモノレールのように点字ブロックを跨いで活用したりとか… 賛否両論ありますけど、いろんな方々を混ぜこぜでアイデアを発散しあうことで、皆にとって素晴らしいユニバーサルデザインができると思っています。


タキザワ:本当そうですね。


大澤:でもその場がなかなかないのです。だから作っていかなきゃいけない。


タキザワ:ぜひ一緒につくりましょう! 僕も点字ブロックってすごく素晴らしい仕組みだと思っていますが、テクノロジーが発展した今、多様な人々とデザインし直したらもっと違う仕組み、インフラが作れるはずですよね。


大澤:デジタルがこれだけ進化していますしね。


タキザワ:どうしても点字ブロックありきで考えちゃうところがバイアスや制約になっていて、そうするとどうしても改善案に落ち着きがちで、突き抜けないですよね…


大澤:そうですね。議論も広がらないですよね。


タキザワ:視覚障害者の方から「ホームからの転落事故はどうすればなくなりますか?」と

質問されたことがあったのですが、僕はとっさに「電車がなくなればいい」って応えました。近い未来に車の自動運転やドローンなどが発展したら、電車がなくなる世界もあり得ると思っていて、そうしたらホームからの転落事故はなくなるはずだと。


大澤:そういう発想が必要ですよね。固定観念に捉われずに常識を覆がえすような。


タキザワ:テクノロジーはどんどん進化していくので、妄想から発想してみるくらいで良いし、妄想するのは楽しいですよね。


大澤:視覚障害の方々と信号機の問題について議論していたりするのですけど、信号機をなくせばいい、っていう発想から始めればいいですね。


タキザワ:そうそう。信号機がなくなるか車がなくなるか、もしくは道路がなくなってよいかです…(笑)


大澤:そういうトークはしたことなかったです。


タキザワ:そうですか、じゃあ勝手にやりましょう! 妄想から発想して、形にする方法は後から考えていくアプローチですね。


大澤:妄想大好きなので、ぜひやりましょう!


タキザワ:ということでそろそろ時間になりましたので、今回はここで終了したいと思います。大澤さん、ありがとうございました!


大澤:ありがとうございました!

 


PLAYWORKS Inc.|ともに創り、社会を前に進めよう

PLAYWORKS Inc. 代表 タキザワケイタ インクルーシブデザイナー・ワークショップデザイナー 新規事業・組織開発・人材育成など企業が抱える課題や、社会課題を解決へと導きます。一般社団法人PLAYERS リーダー・筑波大学 非常勤講師・青山学院大学 ワークショップデザイナー育成プログラム講師・D&I 100人カイギ キュレーター・LEGO® SERIOUS PLAY® 認定ファシリテーター